釣り求人は違法だけどなぜなくならない?事例から考える求人の世界

釣り求人とは、実際には存在しない、もしくはすでに終了した「おいしい条件の求人情報」をあたかも現在募集中であるかのように見せて、求職者の目を引こうとする手口のことです。

目的は求人そのものではなく、「登録させること」「別の求人を紹介すること」にあります。

実は私たちが昔から日常でよく目にする例に似ています。

たとえば、不動産屋のチラシで「駅徒歩3分・家賃3万円・築浅1LDK」
そんな驚くほど条件の良い物件を見かけたことはありませんか?

ワクワクしながら店舗に行ってみると、
「あ、その物件は今朝埋まりまして…でも似た物件ありますよ」と言われ、
家賃が倍以上の物件を紹介される――これと同じ構図なのです。

また、縁日やお祭りのくじ引きで「1等はNintendo Switch!」と大きく書かれていても、
当たりが入っているかどうかはわかりません。

結局は光るヨーヨーがもらえるだけだった、
なんて経験がある方もいるのではないでしょうか。

釣り求人もまさにこれと同じで、「豪華賞品のような求人」で注意を引き、
実際にはまったく別物を紹介してくるのです。

釣り求人の典型的な例としては、
「データ入力時給1500円から2100円」「シール貼り時給1500円」などの条件が並ぶ。

応募してみると「その求人は今はありません」と言われる。
代わりに別の、条件の悪い仕事を紹介される。
という流れになります。

このような手口がなくならないのは、
企業や派遣会社にとって「登録者を集める手段として手軽かつ効果的」だからです。

法的には虚偽の求人情報は違法ですが、摘発が難しく、
実質的に“やったもの勝ち”のような状態が続いています。

だからこそ、求職者側が「これは本当に存在する求人なのか?」「条件が良すぎないか?」
そう慎重に見極める目を持つことが必要です。

おいしい話には裏がある――不動産や縁日の景品と同じように、
求人にも“釣り”が存在することを知っておきましょう。

この記事では釣り求人について徹底解説します。

 

ポイント

  • 釣り求人がどのような手口で行われているか

  • 釣り求人が法律違反になるケースとその根拠

  • 釣り求人が処罰されにくい理由とその構造

  • 求職者が釣り求人を見抜くための具体的なポイント

目次

釣り求人は違法だけど、、、

なぜ釣り求人はなくならないのか?

釣り求人が今でもなくならない最大の理由は、
求人を出す側にとって「都合が良すぎる仕組み」が存在しているから。

これは法律上の規制が甘いこと、
そして求人サイトや媒体側が積極的に取り締まらないことも関係しています。

まず、法的な観点から見てみましょう。
本来、求人数や労働条件を偽って募集する行為は、
職業安定法や景品表示法に抵触する可能性があります。

しかし現実には、虚偽の内容を掲載したとしても
「最近その求人は埋まりました」と言い逃れされることがほとんどで、罰則も限定的。

これにより、悪質な派遣会社や業者が摘発されることは極めてまれです。

さらに問題なのは、
こうした「釣り求人」が実際に効果的であるという点です。

つまり、求職者が魅力的な条件に引かれて応募してしまうことで、
企業は求職者の連絡先を入手し、別の仕事を紹介するきっかけを得ることができます。

登録者を増やしたい、人材を確保したいという企業側のニーズを
手っ取り早く満たせてしまうのです。

私が過去に経験したケースでは、
「完全在宅で月収30万円、シフト自由」という求人に応募したところ、
実際に連絡が来たのは「倉庫内軽作業で通勤必須、時給1200円」というものでした。

最初から希望条件とはかけ離れており、まさに釣り求人の典型でした。

このように、求職者にとっては迷惑でしかない行為ですが、
求人を出す側にとっては「リスクが少なく、効果が高い」手段であるため、
なくならない。

仮に罰則があったとしても、摘発される可能性が低ければ、
実質的な抑止力にはなりません。

だからこそ、私たち求職者側が「騙されない目」を持つことが最も重要なのです。

釣り求人の特徴を見抜く5つのポイント

釣り求人に騙されないためには、
いくつかの典型的なパターンを理解しておくことが有効です。

私の経験も踏まえながら、5つの見抜き方を紹介します。

1つ目は「条件が良すぎる」求人。
未経験歓迎、高時給、完全在宅、残業なし、といった要素がすべて揃っているような求人は、
基本的に疑ってかかるべきです。

誰もが飛びつきそうな条件であっても、実際には存在しないケースが多く、
登録後にまったく違う求人を紹介されることになります。

2つ目は「求人情報が具体的でない」こと。
例えば仕事内容が「簡単な作業」「電話応対など」と曖昧だったり、
勤務地が「都内各所」「関東一円」など範囲が広すぎたりする場合、
情報の信ぴょう性は低くなります。

良質な求人であれば、
職種・勤務場所・労働条件などが具体的に書かれているものです。

3つ目のポイントは「掲載期間が長すぎる」こと。

本当に条件の良い求人は、すぐに埋まるのが普通です。
にもかかわらず、1ヶ月以上にわたり同じ案件が掲載され続けている場合、
それは釣り求人である可能性が高いと言えます。

4つ目は「問い合わせへの対応の悪さ」です。
私の場合、質問メールを送っても一切返信がなかったり、
「その求人は今ちょうど埋まってしまって…」
という曖昧な説明を受けたりしたことがあります。

本当に求職者を必要としている企業であれば、丁寧に対応するはずです。

5つ目は「登録を急がせてくる」点。

まだ応募もしていないのに「とりあえず登録だけでもしませんか?」と
強く勧めてくる求人は注意が必要です。

登録をさせることが目的であり、
求人の内容は二の次になっていることが多いためです。

こうした特徴を知っておくだけで、
危険な求人を避ける確率は大きく下がります。

求人に応募する前に、
まずは情報の裏を読み解く癖をつけるようにしましょう。

大手媒体は釣り求人はなぜ多いのか?

大手媒体に釣り求人が多い理由。
それは誰でも無料で簡単に掲載できてしまうという「仕組みのゆるさ」にあります。

一部の媒体は検索エンジン型の求人サイトであり、
他の媒体と比較しても審査基準が非常に甘いという背景があります。

求人を出す側は無料で求人を出せるため、
悪質な業者が何件でも虚偽求人を掲載してしまうことがあり、
特に「在宅OK」や「初心者歓迎」など人気の高いワードが並ぶ求人は要注意です。

実際、私も在宅ワークを探していた際に求人に応募したことがあります。

業務内容は「簡単なデータ入力」と記載されていましたが、
面接に進むと「営業もやってもらう可能性がある」「外出も必要になる」と、
条件がまるで違っていました。
これでは完全に時間の無駄です。

また、一部の求人サイトは審査が基本的に事後チェックであり、
違反を指摘されるまではそのまま掲載されてしまうこともあります。

ユーザーからの通報があって初めて調査に入るという仕組みのため、
被害が出るまで放置されてしまうケースも少なくありません。

一方で、求人の母数が多いため、すべてが悪質というわけではありません。
実際に良い求人も混在しています。
しかし、そのぶん「見極める力」が求められます。

求人サイトを利用する場合はあまりにも良すぎる条件や、
詳細情報のない求人には特に注意が必要。

また、企業名や求人内容をコピーして他の媒体でも同じ情報が出ているかどうか調べるなど、
自衛の姿勢が欠かせません。

信頼できる企業を見極める目を持つことで、大手求人サイトを有効に活用することもできるでしょう。

テレビCMの求人媒体に潜む危険性

くどいようですがテレビCMを流しているような大手求人媒体には安心感があるかもしれません。しかし、実際には「釣り求人」が混在していることも多く注意が必要。
むしろ媒体の知名度を逆手に取った“信頼の悪用”が起きているとも言えるでしょう。

テレビCMを展開している求人サイトは、利用者の数も圧倒的です。
そのため、求人広告を出す企業側にとっては、
より多くの応募を集められる魅力的な場所となっています。

この高い集客力を背景に、派遣会社や一部の企業は「実際には存在しないような理想的な求人」を載せて、登録者を増やそうとするケースがあります。

私も過去に、有名求人媒体で見つけた「データ入力・時給1600円・完全在宅・土日祝休み」という条件にひかれて応募したことがあります。

CMでも「働き方自由!」とアピールされていたので期待しましたが、
実際に面談に進むと「今はその求人は終わったが、倉庫内作業なら紹介できる」と言われ、がく然としました。

ここで重要なのは、求人を出しているのはあくまで「企業や派遣会社」であり、
媒体自体が求人内容を保証しているわけではないという点です。

CMで好印象を与えていたとしても、個別の掲載内容まで精査されているとは限りません。
つまり、媒体に信頼感があっても、そこに載っている求人が本物かどうかは別問題なのです。

知名度のあるサイトを使うこと自体は悪くありませんが、
「大手だから大丈夫」と思い込まないことが大切。
応募前には求人内容の具体性や企業名、応募後の対応などをしっかり確認しましょう。

派遣会社の釣り求人を通報した際の流れと限界

釣り求人に出会ったとき、真っ先に思い浮かぶこと。
それは「通報して何とかできないか」ということかもしれません。

確かに通報は可能。しかるべきルートも存在します。
しかし、残念ながら現実にはその効果が限定的であることも知っておく必要があります。

まず、通報の流れについて簡単に紹介します。
派遣会社が出した求人に虚偽の内容があると思われる場合、
労働局の「総合労働相談コーナー」やハローワークの相談窓口に連絡することができます。

通報内容には、求人票のコピーや実際のやり取りの記録があると、
話がスムーズに進みます。

ただし、この段階で「すぐに掲載取り下げ」や「行政処分」が行われるとは限りません。
むしろ派遣会社側が「求人は本当に存在した」「たまたま埋まっただけ」といった説明をすることで、法的な処分を逃れることがほとんどです。

私の場合も、「すでに募集は終了しました」という言い訳で終わらされた経験があります。
その求人は1ヶ月以上掲載されていたにも関わらず、
通報しても「今は取り下げられているので対応は難しい」と言われ、
納得のいく結果は得られませんでした。

つまり、通報自体は無意味ではないものの、
それで釣り求人が根本的になくなるわけではないということです。

通報をしている間にも、似たような求人が他の名前や媒体で再掲載されていることも多く、
イタチごっこになりがちです。

このように考えると、「通報する」ことと並行して、
自分で求人の信ぴょう性を見極めるスキルを身につけることの方が、
現実的で効果的な対策になるといえるでしょう。

釣り求人 個人情報を狙う手口に注意

求人詐欺の中には、仕事を紹介するふりをして個人情報を収集しようとする悪質なケースがあります。

これは在宅ワーク希望者を狙った典型的な“情報搾取型の釣り求人”で、
内容が事実とかけ離れているにも関わらず、
応募者の名前・住所・電話番号・メールアドレスなどを収集するのが目的です。

このような求人は、特に「初心者歓迎」「時給が高い」「完全在宅」といった魅力的なワードで構成されています。

そして応募フォームを開いてみると、履歴書レベルの詳細情報を入力させようとしてきます。
中には、本人確認書類の画像や顔写真まで求めてくるものも存在します。

私が出会ったケースでは、「採用前に本人確認が必要なので、
マイナンバーカードの表裏の写真を送ってください」というメールが届いたことがあります。

そのときは違和感を覚えて断りましたが、求職中で焦っていると、
うっかり送ってしまう人もいるかもしれません。

こうした情報は、悪用されるリスクがあります。名簿業者に売られたり、
なりすましに使われたりする可能性もあるため、絶対に安易に提出してはいけません。

信頼できる求人かどうかを見極めるまでは、
最小限の情報のみを提供することを徹底しましょう。

さらに、連絡先にフリーアドレス(例:GmailやYahoo!)しかない求人や、
企業名が不明確な求人は特に警戒が必要です。

本当に信頼できる企業であれば、ドメイン名に企業名が入ったメールアドレスや、
固定電話番号、会社所在地などが明記されているはずです。

個人情報を狙った釣り求人は、被害にあってからでは遅いという点が大きな問題です。

だからこそ、最初から「この求人は本当に信頼できるのか?」と疑問を持ち、
情報の出し方にも慎重になることが必要です。

 

「時給1500円のデータ入力」体験談に学ぶ教訓

あるとき、「時給1500円・データ入力・週3日〜OK」という求人を大手の求人媒体で見つけました。

条件が理想的すぎるとは思いながらも、ちょうど仕事を探していた知人は、
半信半疑で応募しました。

応募フォームは非常に簡素で、名前や住所、過去の職歴などを入力すると、
すぐに「面談日程のご案内」という連絡が届きました。

そこまでは丁寧な対応だったのですが、面談当日になると雰囲気が一変します。

「その求人は募集終了しました」と言われ、紹介されたのは全く別の職種。
しかもデータ入力ではなく、電話営業を伴う業務。

知人は「電話営業は難しいです」と伝えると、「それでは仕事は紹介できませんね」と一蹴され、やりとりは終わりました。

この経験から私も学んだのは、求人票に記載されている内容と実際の仕事内容が一致するとは限らないということです。

特に人気のある条件、たとえばデータ入力やシール貼りなどは、
釣り求人である確率が高いと感じました。

また、企業が本当に求めている人材であれば、もっと丁寧に話を聞いてくれるはずです。

応募してすぐに「別の仕事でもいいですか?」と聞いてくるような対応は、
初めからその求人が存在しなかったと考えるのが自然です。

もちろん、在宅でのデータ入力の仕事がすべて嘘というわけではありません。
けれども、「理想的すぎる求人ほど警戒する」ことを身をもって体感しました。

今後同じような求人を見つけたときは、企業名や評判をしっかり調べ、
口コミや他媒体での掲載状況なども確認したうえで応募するつもりです。

まとめ:釣り求人が違法でも処罰されにくい現実とは?

釣り求人が「違法」になるケースは確かにあります。

例えば、実在しない求人や、明らかに虚偽の条件を掲載する行為は、
職業安定法や景品表示法に違反する可能性があります。

この背景には、“立証の難しさ”と“罰則の弱さ”という2つの問題が横たわっています。
求人が虚偽かどうかを行政が判断するためには、
「掲載時点で嘘であると確定できる証拠」が必要になります。

しかし、求人を出した企業が「その求人は実在したが、もう採用が決まった」と説明すれば、
それ以上の追及は困難になります。

さらに、仮に違法と認定されたとしても、罰則は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」にとどまります。

これは非常に軽微な処分であり、悪質な派遣会社や企業にとっては“広告費の一部”程度にしか感じられない場合もあります。

また、大手求人サイト側も、掲載企業の数が減ることで収益が落ちることを避けたいという思惑があるため、通報があっても積極的に掲載停止に動かないケースがあるのも実情です。

つまり、違法であっても“グレーな状態”のまま放置されやすく、
構造的に処罰されにくい環境が整ってしまっているのです。

このような現状では、行政やサイト側の対応に期待するだけでなく、
求職者側が疑わしい求人に近づかない自己防衛の意識を持つことが求められます。

「データ入力時給1600円」「シール貼り時給1500円」みたいな求人は疑ってかかるのが無難でしょう。

「違法かどうか」ではなく「信用できるかどうか」を自分自身で判断する視点が、
今の求人市場ではより重要になってきていると言えるでしょう。

釣り求人は違法?知っておくべき現実と対策【釣り求人 違法】

  • 釣り求人とは実在しない好条件の求人で求職者を引き寄せる手口

  • 求人の目的は雇用ではなく登録者の獲得にある

  • 「駅近・格安家賃の物件」などと同じ誘導型の構図

  • 高時給・未経験歓迎・在宅など魅力的な条件が並ぶ求人は要注意

  • 求人内容があいまいで勤務地も広範囲なものは信頼性が低い

  • 掲載期間が異常に長い求人は釣りである可能性が高い

  • 応募前の質問に曖昧な対応をする企業は疑ったほうがよい

  • 登録だけを急かす求人は登録自体が目的である

  • 職業安定法や景品表示法に違反するケースもある

  • 違法でも「もう埋まった」と言い逃れされ処罰が難しい

  • 求職者の個人情報収集が真の狙いという悪質な例も存在する

  • 大手求人サイトでも審査が甘く釣り求人が紛れている

  • 通報しても実効性が低く、対応されないことが多い

  • 求人の信ぴょう性を自ら見極める力が求職者に必要

  • 求人内容と面談時の条件が大きく違えば釣りの可能性がある

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